1980年に大塚製薬から発売された「ポカリスエット」は、現在はスポーツ飲料として多くの人に親しまれています。2020年現在は日本だけではなく世界20か国で販売している人気飲料水として、日に日に存在感を増し続けています。そんなポカリスエットの開発秘話をちょっとだけご紹介。
ポカリスエットを最初に提案した人は、実はあのオロナミンCの味わいを決めた人でも知られている敏腕社員。商品開発における技術部長である彼が、「体外に失われた栄養成分をおいしくごくごく飲める飲料を作ってみたい」という発想から生まれました。これは部長がメキシコ出張に行った際、お腹を壊して入院してしまったときに、病院内で手術を終えた医師が栄養補給のために「点滴をそのまま飲んでいた」光景を偶然見かけたことに由来します。
さらに部長が着目したのが“体から流れる汗”です。汗には体の維持に必要不可欠な水分や電解質が含まれていますので、その成分を飲料水として補給できるのでは、と考えるに至りました。しかし、汗の成分をそのまま飲料にしても苦くて飲むことはできません。そこで、柑橘系の味わいにしたりと実に1000を超える実験を積み重ねた結果、生まれたのが「汗の飲料水=(ポカリ)スエット」です。ちなみに「ポカリ」は青空をイメージできて、語呂や響きがいい発音とのこと。
ポカリスエットは当初味が薄いものと濃いものの2つを開発しました。社内の意見はほぼ全員一致で濃い方を推していたのですが、ここでも先の部長が活躍します。「では登山をして汗をかいたあとに飲んでみよう」と。そして社員でトレッキングを満喫し、山頂に上ったところでポカリスエットを飲み比べてみると、今度は満場一致で薄い方がおいしく感じる!となったのです。これは運動によって水分や必要成分が汗で排出されたため。また、運動後は味が濃いものよりも、薄いものをがぶがぶと飲みたいという基本的欲求も後押ししていました。
このような技術開発部の“汗の結晶”により誕生したポカリスエットは、30年を経たいまでも超がつくロングセラーとして多くの人に飲まれているのです。余談ですが、ポカリスエットは販売当時からいまにいたるまで15回以上容器の変更が行われてきましたが、波型のブランドロゴは当時のままだそうです。