昔からヒトの生活にとって身近な存在にある「牛」。食用の肉やミルクといった家畜として、またヒンズー教にとっては神の乗る動物として崇められていたりもします。
今回はそんな牛にまつわる雑学をご紹介します。
東南アジアでは今でも家畜として飼育されている水牛。ベトナムのお土産店に行くと、水牛の角を削って作った調度品がたくさん売られていますね。その水牛と牛は一見すると同じ「牛」という漢字が使われているので、同じ種類と考えられがちですが、具体的に言うと牛はウシ属で水牛はスイギュウ属に分かれていて、これは「ゴリラとチンパンジーほど違う」と言うことができます。ゴリラとチンパンジーは確かに似ているかもしれませんが、違う動物として認識していますよね。牛と水牛もそれと同じように、種類自体が異なると考えてよさそうです。ちなみに、ヒンズー教では牛は聖なる動物のため、食べることは禁止されていますが、水牛は食べてもいいようです。
日本では高級肉として知られる霜降り肉は、昨今では欧米でも「和牛ステーキ」の象徴として認められるようになりました。霜降りはサシと呼ばれる脂肪分を多分に含んだ美しい色合いのお肉となりますが、実はこのサシを作るため、牛は脂肪の生成を抑えるビタミンAを極力摂取させないように飼育されています。このビタミンAが不足すると、失明する牛もいれば、足の関節が悪くなる牛もいて、非常に不健康と言わざるを得ません。それでも出荷されれば「高級牛」としてみなされるのは、なんだか不思議ですね。
牛の吐き出すメタンガスは、フロンや二酸化炭素と並ぶ温室効果ガスの1種で、地球の温暖化やそれに伴う自然破壊の直接の要因となっています。地球の温暖化が進む原因のおよそ20%は、実はこのメタンガスによるものとされていて、さらにメタンガスの15%は家畜が吐く「げっぷ」となります。牛1頭が1日に吐くメタンガスは150~300リットルもあり、同じく温室効果ガスとして懸念されている二酸化炭素よりも30倍近い温暖化リスクを孕んでいます。現在では世界で繁殖されている牛ですが、ちょっとは自制した方がいいかもしれませんね。
牛の起源は諸説ありますが、5世紀にはすでに日本に伝播してきたと言われています。時代でいえば卑弥呼のいる弥生時代の遺跡から、牛の骨と思われるものが発掘されたこともあります。ヨーロッパやアフリカでは紀元前から家畜として飼われていて、壁画などでも牛を見ることができるように、古くからヒトと牛は密接な関係にあるようです。